ガラガラガラ。
「いらっしゃぁい」
少し緊張しながら年季の入った引き戸を開けると、少し間伸びしたおかみさんの声に出迎えられる。引き手の窪みはすべすべとして温かみをたくさんの月日を感じた。
自分はどうやら、定食屋でひとり飯をするのが趣味になったようである。前に一人飲みをしてみたがどうも落ち着かず、その一回きり一人飲みはしていない。定食屋といっても大手チェーン店ではなく、長年夫婦で営んでいる系の定食屋である。
定食屋でご飯を食べると、美味しいものを食べること以上の幸福や面白さを感じる。例えば厨房の様子、どんな調理器具や設備がどう配置されているのか、観察すると結構面白い。その店の考えられた厨房のレイアウトを見て、自分の家のキッチンに活かせるところはないかと探してしまう。
料理を待ちながら、食べながら、店にいる人を観察するのも面白い。厨房で鍋を振るう大将の手つきや常連客と雑談を交わす女将さん。ゆっくりとご飯を食べ、ゆっくりと話をしている老夫婦。隣の席にすわる謎の外国人。なんでそのメニューにしたのだろう、近くに住んでいるのだろうか。考えているうちに、注文したハムエッグが届いた。
さて、お楽しみはこれからだ。
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